理事長挨拶

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通信・放送の国際展開とJTECの役割


一般財団法人海外通信・放送コンサルティング協力
内海 善雄


JTECが設立されたのは1978年であり、既に32年以上にわたって通信・放送分野で国際貢献をしてきました。設立当時は欧米企業が開発途上国の電気通信を発展させるため、コンサルティング活動を盛んに行って国外に進出していた時期であります。日本も欧米に遅れずに電気通信や放送分野で国際協力を展開する必要があるということで故梶井 剛氏(初代日本電信電話公社総裁)や故永野重雄氏(当時の経団連副会長)の音頭でJTECは設立されました。

JTECが電話網の提案と建設・管理を行い、日本企業が電話交換機を供給し、現地生産の要望があれば応えるといったパターンで、日本の通信機メーカーが進出して実績を重ねてきました。JTECが国際協力として先ず海外へ出、その後に日本企業が続きました。当時の日本企業には勢いがありました。

近年の中国、韓国の海外進出に比べるまでもなく、日本の海外におけるプレゼンスが大幅に低下しております。その理由は日本の国力低下や、外国での民営化の動きが急なことが考えられます。JTECの活動は元来、主にODA(政府開発援助)予算に依存していましたが、今は、ODAからの資金拠出が激減しております。また、携帯電話の登場に伴い、通信事業者は民間の力でインフラ構築をというのが世界の趨勢となったこともあり、ODAの出番が少なくなってきています。こうした折、中国は政府が先頭に立って、光ファイバー、IP通信網の構築援助を武器に、資源獲得を目的として、アフリカ諸国への戦略的な進出を図っております。これに比べて日本企業の海外進出の意欲が減退している現実を、ITU事務総局長在職の8年間、つくづく感じておりました。

JTECには国際協力の大きな経験とノウハウがあり、これまでの活動実績から、中立・公正なコンサルティングという信頼を築いてきました。こうした実績や信用度を、日本企業が外国企業と競争して海外展開を行う際に、もっと利用して頂きたいと思っております。発展途上国は外国企業に期待を裏切られた苦い経験から、中立・公正なITU等の国際機関や公的コンサルタントの助言を求めております。現在、JTECは、我が国が得意とする究極のセキュリティ技術である生体認証を含め電子政府の基礎となるナショナル・データベースの構築をアフリカの国々等に提案しております。また、防災システムやセンサー技術も得意分野です。こうした高度な分野はまだ中国には追いつかれないと思われます。

JTECが開発途上国の良きアドバイザの役割を持続できれば、日本企業の海外展開の露払いとなり、日本のICT産業発展に貢献できるというのが、JTEC全職員の基本的認識であります。

(本文は電波新聞(2010年10月21日)の理事長インタビュー記事を要約したものです。)